長年オリンピックの競技にならなかった空手。2020年の東京オリンピックでようやく競技として認められました。
そんな空手ではありますが、たくさん流派もありますし、具体的にどんなルール採用されているのかわかりにくいという人もいるでしょう。
元空手家として一応黒帯まで取得した私が、オリンピックの空手はどんなルールなのか、経験したことがない人でもわかりやすいように説明します。
※オリンピックではルールの変更が行われる可能性があります。
形のルールを簡単に説明すると、二人の選手が順番に形を行い、7人の審判によって点数をつけられて勝者が決まるというルール。
採点の基準や減点、反則についても紹介します。
採点基準は細かくあるのですが、簡単に説明すると技の正確さ・力強さ・スピード・バランス・リズムです。
正直、空手を経験したことのない人からすると、少しわかりにくいと思いますので、まずは以下で紹介する形を見てみてください。
清水 希容選手は世界大会でも1位を取った経験がありますし、全日本空手道選手権大会では、2013~2018年まで1位で6連覇しています。
上の動画は2016年の全日本空手道選手権大会です。
喜友名 諒選手も世界空手道選手権大会で2014年、2016年、2018年で1位に輝いており、全日本空手道選手権大会では2012~2018年まで1位で7連覇しています。
上の動画は2017年の全日本空手道選手権大会です。
緩急の付け方や、動き一つ一つの力強さ、そして速さや正確さなどがなんとなくわかったと思います。正直、空手経験者である私でも他流派の形は何をやっているのか良くわかりません。
ですが、いくつか形の動画を見ていると何となくわかると思います。
より細かくルールを説明すると以下のようになります。
そして、上記で説明した力強さ・スピード・バランス・リズムです。
減点となるものもあります。
形による反則というのは滅多に見ることはありませんが、このようなものがあります。
オリンピックに出場するくらい熟練した人なら、反則をしてしまうことはないでしょう。
ちなみに、道着の下衣(ズボン)は、単体でも締めることができますので、帯が落ちたとしても下衣が脱げてしまうことはありません。
空手のことをよく知らない人からしてみると、やっぱり組手の方が見ていて楽しめるかもしれません。
とはいえ、ただでさえ素人目には早すぎてわかりにくいですし、ルール自体も少し複雑なので知らない人にとっては意味が分からなくなってしまう可能性があります。
ルールが理解できたら、組手の楽しみ方や見どころもわかりますので、ぜひ勉強していってください。
オリンピックの空手はポイント制が採用されています。と言っても、ピンと来ないと思います。
簡単に説明すると、有効(1ポイント)、技あり(2ポイント)、一本(3ポイント)となっており、どちらかが以下の勝利条件を満たすことで勝敗が決まります。
※上段は顔面や首、中段は腹部や胸部、背中
決めるのが難しく、相手へのダメージが大きくなる技を決めほどより多くポイントが取れます。
これを見て気が付いた人もいるかもしれませんが、下段(脚)に攻撃してもポイントにはなりません。ですが、足払いをすることはルール上問題ありません。
突きで決まってもほとんどの場合1ポイント、蹴りは中段が2ポイントで上段が3ポイントと覚えるとわかりやすいです。
ただし、強く当てすぎると反則になってしまいます。強く当てすぎるという基準も審査員によって若干のバラツキがあります。
正直、ここまでのルールを知っているだけでも十分だと思います。
ここからは、できるだけわかりやすくなるようにしますが、より細かい話になってしまいますので、もっとオリンピックの空手を楽しみたいという人だけ読み進めてください。
実は、ただ当てるだけではポイントの取得にはなりません。以下の要素を含んでいるかが空手の試合では重要になります。
「背筋を伸ばし、相手に対しまっすぐ体を向けた状態で攻撃が行われていること」とあります。
空手の試合をするうえで有効な攻撃ができると言える姿勢で決める必要があります。力を入れにくい体勢で当たったとしても、ポイントにはならないということです。
上段蹴りを出してもバランスが安定していないとか、不安定な体制で中段突きを当てるなどの場合、安定していないと言えます。
「悪意のない態度で、有効技をかけている間に見られる際だった集中力を示すもの」と説明されていることが多いのですが、簡単に言えば、試合に集中しているかどうかです。
ある事例として、技が決まったのを審判にアピールしたり、ガッツポーズをしたことで無効になったケースもあります。
空手家と言えば武道家でもあるわけですから、品性を欠くことで無効になってしまうというわけです。
「技の力とスピードがあり、達成するための確固たる意志の表現」とあります。
技を決めるため、そして勝つために、ひるむことなく最後まで技を決められたのかを見ます。逃げ腰になったり、攻撃に躊躇してしまった場合は無効になってしまいます。
「相手の反撃の可能性をみる継続的な集中力」、そして「技をかけた後、顔を背けることなく相手に正面を向けていなければならない」とあります。
これを簡単に言うと、技が決まったとしてもすぐに相手からの反撃に備えようということです。
空手と言えば残心が有名ではありますが、経験したことない人にとってはわかりにくいと思いますので、動画を紹介します。
動画の最後に奥の人がしています。技が決まった後、片方の腕を前で構え、もう片方の腕を腰より少し上の方で構える格好のことを言います。
「最も効果的な瞬間に技をかけること」とあります。
最も効果的というとわかりにくいのですが、簡単に言うと技が決まっていればポイントになるということです。
「有効な距離で技をかけること」とあります。
触れるか触れないかくらいの距離、もしくは少し触るくらいのところに突きや蹴りを放ち、しっかり止めることです。
遠いところから攻撃をしても、当然ですが無効になります。また、強く当てすぎた場合もポイントにならない場合があります。
反則は2つのカテゴリーに分かれていて、4回反則行為をすると反則負けになります。
カテゴリー2はたくさんあって、見ている方としてはよくわからないかもしれませんが、日頃鍛錬している人であれば、こうした行為を取ることはないでしょう。
稽古の時から教えられているはずですから。
空手と言えば、投げ技は禁止されているというイメージがあるかもしれませんが、空手にも投げ技はあります。伝統派空手の試合を見ているとわかりますが、結構な頻度で投げ技が出てきます。
と言っても、帯よりも上に持ち上げる投げ技は基本的に禁止されています。(正確には「軸点が帯より上になる投げ技」とあります。)例:背負い投げや肩車など
また、巴投げや隅返し投げなども禁止されています。
認められているのは、相手をコントロールできる技とあり、出足払いや小内刈りなど、主に足を使った投げ技や相手を倒す技です。
それを踏まえたうえで試合を見てみてください。
どのスポーツでもそうですが、細かいルールを把握しようと思うと、すごく難しいです。
形ではどんなことが美しく見えるのか、組手はどんな時にポイントを取れているのかなど、何度も試合を見てみることでわかってきます。
ルールは伝統派空手とほとんど同じですから、youtubeには試合の動画がたくさんありますので、オリンピックを始まる前の予行演習として見てみることをお勧めします。
それに、誰が強いのかわかっていると、オリンピックもより楽しめますよ。