どれが本当の自分か分からないという悩みは、若い頃ならではのものだと思っていました。社会人になれば自分という人間が確立し、自信を持てるはずだと。
しかし現実は、今でも迷子になることがあります。
- 相手がイメージする自分を演じてしまう
- 本音を伝えるのが怖い
- よいことをしても罪悪感が湧いてくる
こうした積み重ねで、気づけば落ち込んでいるのです。
とはいえ、悩みの規模としてはかなり小さくなりました。楽になれることがわかっているので、若い頃に感じた先の見えない不安はありません。
ここでは、本当の自分が分からないという悩みを抱えてきた私が実践している【4つのリセット法】をご紹介します。
記事後半では、自分探しをしてしまう理由についても触れています。あなたのモヤモヤ解消にぜひお役立てください。
どれが本当の自分か分からない時のリセット法4つ
私が実践しているリセット法は次の4つです。
- ”悪い自分”を見捨てない
- 自分への質問集をつくる
- すべてが思い通りにいくなら何をしたいか想像する
- 豊かな自然のなかで過ごす
どれが本当の自分か分からなくなった時、きっと誰もがその答えを探そうと一生懸命になるでしょう。
しかし答えを見つけたいなら、まずは心の調子を整えることが先決。「急がば回れ」の精神で疲れた心をリセットしましょう。
ひとつずつ詳しく解説していきます。
1.”悪い自分”を見捨てない
自分の考えや行動に対して「良い」「悪い」のジャッジをしがちな人は、そこから抜け出すことが心のリセットにつながります。
二極化思考は良い自分でいることに強くこだわり、悪い自分は徹底的に排除しようとします。
そして自分だけにとどまらず、他人や環境に対しても二極化思考になってしまうという特徴も。
- 良いか悪いか
- 勝ったか負けたか
- 正しいか間違っているか
- 0か100か など
物事に対して常に極端な二択がせめぎ合っているせいで、ストレスをため込んでしまうのです。
自分との付き合い方がわからず、人間関係においてもトラブルが起こりやすいため、とても生きづらい思考といえます。
二極化思考を止めるには
私自身、ガチガチの二極化思考だったのですが、今はだいぶ頭が柔らかくなりました。
二極化思考を止められたのは、”悪い自分”がいることを認めたからです。
悪い自分だと感じるのは、たとえばこんなときです。
- 親から頼まれごとをされて、面倒くさいと思ってしまった
- 家族の栄養面を考えて食事を作らないといけないのに、カップ麺で済ませてしまった
- 友達に嫌われたくないという理由で親切にした
以前は、悪い自分を否定し、本当の自分(良い自分)はどこか遠くにいるんだと思い込んでいました。
今でも「悪い自分がいてもいいんだ」とまでは割り切れていません。しかしそんななかでも、「悪い自分がいるんだな」と認められるようにはなりました。
否定も肯定もしなければ、受け入れるハードルとしては低かったです。
ただし、すぐに元通りの思考である「悪い自分はあっちいけ!」になってしまうと思います。思考の癖はかんたんには変えられないので、気負わずゆっくり根付かせていきましょう。
悪い自分を受け入れられるようになると、他人や環境に対しても極端な二択は減っていきます。曖昧な状態を受け入れられるようになると心がとっても軽くなりますよ。
そしてもうひとつ大きな変化を感じたのは呼吸です。とくに意識していないのにゆっくり深い呼吸をするようになりました。
気になり調べてみると、こんなことが分かりました。
人の脳の中にある扁桃体という場所は、感情の動き(情動)と呼吸の両方を司っています。そのため緊張や不安、ストレスを感じると速く浅い呼吸になり、反対にリラックスするとゆっくり深い呼吸になります。
(出典:独立行政法人 環境再生保全機構)
二極化思考ばかりしていたころは、おそらく速く浅い呼吸をしていたと思います。呼吸をしているのに息苦しいと感じることが多かったです。
思考の癖を見直すと同時に、呼吸も意識してみてください。
2.自分への質問集を作る
私は悩み事があっても、友達に相談することが滅多にありません。一番近くにいるパートナーにもほとんどが事後報告です。
その代わりに、自問自答で解決に向かって進んでいきます。
- 何が悲しいの?
- なぜそう思うの?
- 一番したいことは何?
- 嫌なことは何?
こうした簡単な質問を自分に投げかけるだけなので、今すぐにでも実践できます。自分への質問集をあらかじめ作っておくと、よりスムーズかと思います。
人間は1日に3万回を超える自問自答をしていることを知り、試しに「何が悲しいの?」と問いかけてみました。すると数秒で答えが浮かんできたことから、自問自答の面白さを知りました。
おすすめは、質問と答えを紙に書いていくという方法です。書き留めておけば後で振り返ることができますし、頭の中を整理しやすくなります。
友達に相談するなら自問自答の後に
友達は良き相談相手となってくれますが、それをメインにするのはおすすめできません。
なぜなら、悩み事がより複雑になってしまうリスクがあるからです。
例えば相談相手を間違えた場合、アドバイスをもらうどころか心ない言葉を言われてしまうかもしれません。
いつも素晴らしいアドバイスをくれる友達だって、コンディションが悪い日もあります。
誰かに相談することはどうしてもタイミングや運に左右されるため、慎重になってほしいのです。悩み事を抱えている時は心がデリケートですから。
まずは自分自身を頼ること。
誰かに相談するなら、自分の中で考えがまとまってからのほうがおすすめです。
3.全てが思い通りにいくなら何をしたいか想像する
どれが本当の自分か分からない落とし穴にはまると、ネガティブになったり、自信を失ったりするものです。
そんな時に役立つのが想像力です。
年齢や性別、職業、貯金などは一切無視して、全てを自由に決められるとしたら何をしたいのか考えてみてください。
想像力を働かせると心が柔らかくなり、視野が広がっていきます。ネガティブから抜け出すための近道となるでしょう。
私にとって楽しい想像は、祖母の故郷に家を買うことです。
不動産売買のサイトで、エリアを指定し、物件情報を価格の高い順から並べ、どんな風に暮らしていこうかと事細かに想像するのです。次第にネガティブ思考は小さくなり、自信の有無なんてどうでもよくなっていきます。
想像力の豊かさが人生にもたらすメリット
自分を見失った時に自由に想像力を働かせると、視野が広がり客観性を取り戻せるとお話しました。
その他にも、次のようなメリットがあります。
- 人を思いやることができる
- 臨機応変に対応できる
- 危機回避能力が高くなる など
想像力の豊かさは、悩み事の解決に役立つだけではなく、人生そのものを輝かせてくれるスキルのひとつです。
4.豊かな自然のなかで過ごす
自然のなかで過ごしていると、心が解放されて本当の自分を探し求めることが無意味なもののように思えてきます。
私は万年運動不足でしたが、腰痛をきっかけにウォーキングを始めました。
最初はその辺の通りをただ歩いていたのですが、それだけではつまらなかったので、自然がいっぱいの公園へ足を運ぶことに。何かと落ち込むことが多い時期だったので気分転換もしたかったのです。
自然が心身を癒してくれるということは、よく理解しているつもりでした。
しかし、何も分かっていなかったのだと思い知りました。
鳥の鳴き声や風に揺れる草木、川のせせらぎ…。どれも気持ち良くて夢中であちこち歩き回りました。
起伏に富んだコースだったのですぐにヘトヘトになりましたが、それでも1万歩以上歩き、最高の気分で公園を後にしたのでした。
気分が落ち込んでいたことなんてすっかり忘れていて、翌日に「あれ?そういえば…」と思い出したくらいです。
自然とのふれあいで健康的な毎日を
自然は、私たちの心と体に最高の癒しを与えてくれます。
元気なときはウォーキングをして汗を流すのもいいですし、疲れている時は自然の中でただぼんやり過ごすだけでも心の安らぎを得られるでしょう。
自然との触れ合いだけで、解決につながる悩みは多いです。私は、ぼんやり景色を眺めている内にふと良い解決策を思いついたという経験を何度もしています。
どれが本当の自分か分からないというのは、悩みとしては深いほうだと思います。時間はかかるかもしれませんが、自然とのふれあいを継続的に行うことできっと癒されるでしょう。
ちなみに、自然とのふれあいは週に2時間以上が推奨されているようです。
自分探しをする時は自分を正当化したい時だった
「どれが本当の自分か分からない」という悩みはこれまで何度となく訪れましたが、改めて振り返ってみるとひとつ共通点があることに気づきました。
それは、本当の自分について悩む時は決まって自分を正当化したい時だったということです。
このことに気付いたのは、知人のある口癖でした。
失敗した後、人の悪口を言った後、声を荒げた後には必ず「こんなの本当の自分ではない」というひと言から弁解を始めます。こうなってしまったのは自分以外の誰か、もしくは環境に原因があるのだと語るのです。
私に同意してもらおうと必死に弁解している彼女の表情は苦しそうでした。それは私の同意を得ても変わることはなく、むしろより深く眉間のシワが刻まれていったのが今でも印象に残っています。
正当化がいかに精神衛生上良くないものであるかを、彼女が気付かせてくれました。
私が正当化に必死な時は、大切なことに気付いていないフリをし、本心とはかけ離れた言葉を使っていました。きっと彼女と同じ表情になっていたはず。
どれが本当の自分か分からない落とし穴にはまってしまうのは、こうして自分に嘘を重ねてしまうからではないでしょうか。
ネガティブなループから抜け出そう
どれが本当の自分か分からなくなった時のことを振り返ってみてください。
不安、罪悪感、怒り、劣等感、嫉妬心など、きっと何らかのネガティブな感情を抱えていたと思います。
こうした感情にのまれてしまうと、抜け出そうともがく過程のなかで正当化に走ってしまうことがあります。
ネガティブな感情を抱える→抜け出そうと正当化する→自分を見失ってしまう→よりネガティブになる…というループであるならば、解決すべきは自分探しではなくネガティブな感情との向き合い方です。
今回紹介しているリセット法は、ネガティブな感情をリセットするという意味です。
心がリセットされれば、「私は嫉妬心で苦しくなっていたんだな」「変わってしまったことが不安なんだな」など、ネガティブな感情を客観的に見れるようになります。
我に返ればあとはこっちのもの。ネガティブループから抜け出せれば、正当化で苦しむこともないし、本当の自分を探す必要もないのです。
まとめ
どれが本当の自分か分からないという悩みの答えは、いつだって「今そこにいるのが自分だよ」です。
自分の決断にたとえ嘘があったとしても、理想とはかけ離れていた行動を取ったとしても、紛れもなく自分自身がやったことです。
自分探しをしたくなる時期というのは、自分のことなのに決定権がないと思い込んでしまうものなので、こう捉えてみてください。
- 「やらされる」のではなく「やる」
- 「やめさせられる」のではなく「やめる」
例えば「キャラを演じてしまう」のではなく「キャラを演じている」と言い切ってみてください。自分次第でキャラを演じないという選択もできるのだと思えませんか?
本当の自分はいつだってここにいる。だから安心してください。
今回紹介した4つのリセット法は、ネガティブループから抜け出し、自分という人間を知るきっかけにもなると思います。
あなたの心が少しでも軽くなれば嬉しいです。